寒グロの矛盾
みなさんご存知の通り、魚は変温動物で水温が急激に下がると一気に活性が悪くなります。寒グロという通称があるクロは意外にも極端に低い水温に弱く、海水温が16度を下回る様な厳寒期に至っては極端に活性が落ちることが多いです。また、低水温に耐性の低い小魚も姿を消すため、ツケエは殆どそのままで、生のオキアミが数匹もあれば事足りるなんて日も少なからずあるなど、通称との矛盾が見られます。
喰いの悪い時季を外して、活性が高い時季に釣ればそれで良いのですが、この時季は脂ものって美味な上、食欲のないクロに食わせてこそクロ釣り師として一人前と言っても良い様な風潮があります。価値ある一匹を求めて、如何にして口を使わせようか?と悩むのが、釣り人の性。厳寒期にどうすれば口を使わせることができるかを解説してみましょう!
潮と海水温を考える
俗にクロ特に尾長は潮を釣れと言われるが、これは適水温時に有効な手段の一つであって厳冬期には内湾の地磯周辺にて、潮のトろい瀬際で2桁釣果が見られるパターンもあります。一般的にクロの適水温は17〜20度といわれています。ただし、南九州や沖縄等では20度以上でも食ったり、関東甲信越地方の日本海側では15度でも食うことがあるそうです。九州エリアなら、18-20度が最も狙いやすい水温なのではと思われます。
しかしながら、いくら適水温内といっても急激な水温低下は活性が落ちてしまいます。2度も下がるとまったく食欲をなくすこともあります。したがって、寒風が何日も吹き続けると確実に水温が下がることが予想されるため、厳しい釣果を覚悟しないといけません。また、表水温以外は1か月前の気温の動きと似た状況になる場合もあるので、記録しておくのもありかもしれません。なお、厳寒期は水温が上がると思われる場合は絶好の機会になることが多いです。移動性高気圧が入って来て、好天が何日も続くポカポカ陽気だと午後から気温が上がることが多いため、午前中よりも午後の喰いが増した!なんて話しも聞かれます。
私の師匠にあたる釣り名人は、厳寒期に期待が持てるクロのことを穴グレと呼んでいます。理由は、この時季はタナが深くなり、瀬際や沈み瀬等の巣穴に潜んでいることが多いからとのことです。
因みに、水温が下がる季節に、九州・沖縄エリアはクロの産卵期(12〜4月)が重なるため、活性は更に落ちやすいです。食欲が落ちるとクロの行動は極端に控えめになります。そのこともあり、巣穴付近は水温が比較的安定していることが多いので、狙い目と言えるでしょう。
狙いのポイントが絞れたら、次はマキエを考察
活性の低いクロはマキエを追って浮上することが少ないです。また、海底近くは水温が安定しており、浅い層よりも居心地がよいことも相まって、水温が下がったときは海底近くを流すというのが定石です。前途した釣り名人の言葉を使うなら、『穴グレ』を狙うです。
そうなると、底近くを釣る以上はそこでマキエとツケエを同調させなければなりません。マキエとツケエはフカセ釣りの基本中の基本。しかし、水深が深くなればなるほど、2枚潮やそもそもマキエとツケエは条件が違うため同調させるのが難しいです。水深が5mと10mで同調させる場合を比べてみると一目瞭然ですが、水深5mならマキエの投入点が少しズレても同調する可能性は比較的高いと言っていいでしょう。なんなら、ウキに直接被すのも一つの手です。ただ、一方水深10mの方では仕掛けが馴染んだ頃には水面でのズレが増幅します。なので、ウキよりも潮上にマキエを打つなどの工夫が必要であり、後打ちのマキエでカバーしていきたいところです。
しかし、エサ盗りが少ない時季なので代わりにマキエを食べてくれる魚はいません…。クロの活性が低いところにマキエをたくさん打ってしまうと、更に喰い気が落ちてしまいます。マキエワークに自信がない方は、マキエヒシャクのカップはできるだけ小さいものを使いましょう。私はたくさん外すので、かなり小さいものを使用しているのはここだけの秘密にしておいてください…。
今までさんざん書いてきましたが、水温が下がったときのクロは活性が低いため時合が短いという傾向も見られます。食欲がほんの少ししかないからか、殆どマキエを撒かなくともすみかに戻り、出てこなくなることがあります。
寒グロの喰いは長くは続かないことが多いので、必然的に時合は短い傾向にあります。タナもコロコロと変わるし、さっきまで釣れていたヒットポイントも変動しやすいです。その為、非常に釣りづらくなる傾向がさらに強まると感じになります。
前出で、水温の関係上昼に喰いが増した話しがあると記載しましたが、厳寒期のクロの活性が上がるのは朝マズメの一瞬である場合もあります。不思議なことに、水温が上がる午後からの時間帯だけではなく、この一瞬を逃すとクロの活性は上がらない最悪のパターンも…。もちろん、その後は喰わせるのが非常に難しく、このチャンスは絶対に逃さない為にも、仕掛け作りにもたついたり、のんびりと休憩をしていては釣果から離れてしまうこともありますので、気を付けましょう。
フカセ釣りでの拘りが分かれるツケエ
クロの場合、チヌほどツケエのバリエーションは多くはないのですが、その少ないバリエーションの中からパターンにハマるツケエを探して使うと、食い渋るクロの釣果に恵まれる確率が高くなります。
その中でも、広く普及しているのがオキアミのムキミです。もともと軟らかいオキアミの皮を剥くことでさらにソフトになり、同時にコンパクトにもなり、口の中に入りやすくなります。エサ盗りが多い時季なら秒殺されてしまいますが、幸い厳寒期はエサ盗りの姿がほとんど見えず、海底まで十分届きます。
また、ムキミ以外では逆にオキアミを固く味付けしたり、着色した物を使用する人も見られます。代表的にな例で言えば、マルキユー社のドリップ型や粉状の集魚材に付け込んだり、みりん等も良い。いわゆる〇〇漬けと呼ばれる物です。これは拘りによって様々なパターンがあるので、各釣り名人の冠が付くことも。但し、べた付く為タックルをあまり汚したくない方は、使用後に海水で指を洗ったりタオルで拭く手間が増えてしまうのが難点…。オキアミ以外では、アミエビも有力なツケエで、匂いが強く集魚力も高いのですが、小さくて細いため太軸のハリでは装餌しづらいという難点があります。ツケエ用として販売されている大粒の刺しアミならサイズ的にも装餌しやすく、寒い時期の予備エサとして準備しておくと役に立つことがあります!
その他、シバエビやボイルオキアミのムキミも良かったりします。理由としては、オキアミのムキミやアミエビより身がしっかりしており、エサが取れにくいというメリットがある為です。冷凍庫で保存が利くため、余ったら自宅に持ち帰って冷凍しておけば次回の釣行にも使えて便利。ただ、自分以外の家族がいる家庭では、トラブルにならない様に事前に伝えておきましょう。
いよいよ本番
寒グロシーズンはいよいよ本番となるこれから。年々シーズンが短くなっている気もしますが、しっかりとパターンを掴んでいる方は釣果をたたき出しています。
釣果を求めるのであれば、なあなあな釣りをするのではなく常に試行錯誤し、時には固定概念から外れたことをしても良いと思います。釣果を出す人が一番正しいのが魚釣り。
是非とも、今シーズンも楽しんで頂きたいです。
まだまだ当サイトは正直記事が少ないです。釣行記や自分なりのテクニックを公開したい方は、お問い合わせよりご一報頂けますと幸いです。一緒に九州&沖縄の釣りを盛り上げていきましょう!
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